企業においてもフリーランスにおいても、ビジネスシーンで利用する名刺には、氏名の他になんらかの肩書きを載せることは多いのではないでしょうか。
名刺とは、所有する個人の所属や役割を明確にし、信頼を得るために用いられるビジネスツールである以上、肩書きの役割は思っているより大きいものです。
では肩書き、特に資格などを記載する時の基準やルールに関しては、どれだけ理解していますか?
この記事では、名刺の肩書きに資格を記載する際の、基準や禁止事項に関して解説します。
さらに、実際に名刺に資格を記載する際のレイアウトのコツも合わせてご紹介しますので、ぜひとも参考にしてみてください。
名刺の肩書きは何を書くべきか

そもそも名刺の肩書きには、どのようなものを書くべきでしょう。
一般的なビジネス名刺の場合、おおむね次のようなモノが考えられます。
- 役職
- 部署名
- 資格
- ブランドをイメージさせる肩書き
役職や部署名に関しては、企業で決められたモノを記載するわけですから、特に問題はないでしょう。
また、「ブランドをイメージさせる肩書き」というものは、時にキャッチフレーズと混同される場合もありますが、特にフリーランスの名刺などにおいては、造語を含めたこうした肩書きを記載することは、自己のブランディングのためにも有効な手段です。
「ブランドをイメージさせる肩書き」の詳細については、よろしければ以下の記事などもご参照ください。
>>名刺で自己アピールするかっこいい肩書き|業種別英語の肩書きを一挙紹介
では、本記事のメインテーマである「資格」を名刺に記載する場合は、どのようなところに気をつければよいのでしょう。
名刺に資格を書く際の基準や禁止事項

名刺に資格を記載する際の基準というモノに関して考えるには、まず資格を記載したいケースを考えてみなければなりません。
それをふまえた上で、基準や禁止事項を考えてみましょう。
記載基準は企業による
例えば不動産会社の社員が「宅地建物取引士(宅建士)」の資格を取得した場合のように、業務に直接関係のある資格であれば、当然企業としてもしっかりとした資格名を記載したほうがよいでしょう。
資格によっては級などのランクがある場合、それも合わせて記載するほうが、より信頼性の担保につながります。
この場合、企業が資格の取得を推奨する場合がほとんどでしょうし、それ自体が個人だけではなく、企業のブランディングにも役立つというわけです。
では、直接企業が取得を後押しした資格ではなく、従業員が自身のスキルアップのために取得した資格を名刺に記載したい場合、その基準はどこに求めるべきでしょうか。
例えば先の不動産会社の例であれば、宅建士などの業務に直結する資格ではなく、インテリアコーディネーターや建築士など、直接業務に関わるわけではないけれど、持っていれば便利な資格を保有した社員の場合、それは名刺に記載するべきか否か。
この答えは、究極的には「企業による」としかいいようがありません。
個人のブランディングが企業のブランディングにもつながると解釈すれば、企業側も許可すればいい話ですし、個人で取得した資格に関しては、一切オフィシャルな名刺には記載してはならない、といったルールを設けても問題はないのです。
そこに法律的な規制などは存在しない。そう理解しておいて問題ありません。
資格団体により記載規制がある場合も

資格の記載に関する規制は、企業ごとに決めれば良いとはいうものの、その記載内容に関しては多少の注意が必要です。
その第1が、資格団体により記載規則がある場合もあるということ。
例えば近年人気の資格である、FP(ファイナンシャルプランナー)の場合は、「1級ファイナンシャル・プランニング技能士」などとすることが義務付けられており、「1級FP技能士」と略したり、級を省略することなどは認められていません。
このように、資格団体ごとの記載規制が設けられている場合もありますので、肩書きに記載する際には各団体の基準をしっかり確認する必要があります。
試験合格=有資格者ではない
苦しい試験を経て、見事合格を果たした場合、喜び勇んで名刺を作成した。なんてことは、案外ありえそうな話です。
しかし、「試験合格=有資格者」ではありません。
資格団体から認定証が届き、正式に認められた後、晴れて有資格者の権利を得ることになりますので、フライングで資格者表記がされた名刺を使ったりしないよう、十分に注意してください。
名刺に資格をレイアウトする際の注意点

それでは次に、名刺に肩書きとして資格を記載する場合の、レイアウトの注意点について考えてみましょう。
名刺全体のレイアウトを考える
資格情報に限らず、名刺のデザインに関しては「名刺のどこに書く」や「肩書きと氏名のフォントサイズの比率」といったものに、ルールなどは一切存在しません。
名刺という限られたスペースを有効活用するために、もっともふさわしいデザインを選択するだけです。
とはいえ大抵の場合の名刺レイアウトの定石としては、中央に大きく氏名を記載し、その周囲に一回り小さな文字サイズで資格名を記載します。
また、企業と個人では企業のほうが立場が上と考えて、個人名の上(横書きの場合)に部署名などを記載しても問題はありません。
しかし、資格名を個人名の上に記載すると、人によっては「持ち主が資格よりも下の人間」という考え方も成立してしまいます。
資格負けしないという意味でも、資格名は個人名の下(右下がデザイン的にはレイアウトしやすい)に記載するほうが、無難なレイアウトだといえるでしょう。
複数資格のレイアウト方法
職種によっては必要とされる資格や、持っておいたほうが有利な資格が複数あり、それらを多数保有している方もいるでしょう。
そうした複数の資格を名刺に記載する場合、表面の氏名下に列挙すると情報自体が飽和して、1番伝えたい情報が目立たなくなってしまいます。
この場合は、資格情報に関しては裏面にまとめて記載するのがベストです。
あくまで資格情報というのは、個人・企業のブランディングを助け、信頼性を担保する補助的な役割に過ぎません。
資格名を表面に列挙してしまうと、資格で仕事をしている印象を与えかねませんので、かえってブランドイメージのためにはマイナスとなってしまうことも考えられます。
資格とロゴの複合レイアウトのポイント
資格によっては、資格特有のロゴや、資格団体のロゴマークを一緒に記載したい場合もあるかもしれません。
この場合でも、複数資格のレイアウト方法と同様に、裏面に記載するほうが無難です。
せっかく苦労して取った資格をアピールしたい気持ちは抑えて、あくまで「資格ではなく個人で勝負する」といった決意を相手に伝えるためにも、資格名などは補足情報ぐらいのレイアウトにするほうが、より個人のブランド力を高めることにもつながるでしょう。
>>2つのロゴでブランディングを!ロゴ入り名刺作成時のポイントを解説
まとめ
この記事では、個人の所属や役割を明確にし、信頼を得るために用いられる名刺に関して、個人と企業のブランディングにも役立つ資格について考えてきました。
資格を記載する際の注意点とレイアウトのポイント。
このいずれにも共通するのは、「個人名よりも資格名を目立たせない」という意識です。
あくまで仕事をするのは自分自身で、資格で仕事をするわけではありません。
資格コレクターを自慢するような名刺を作ってしまえば、初対面の相手へのブランディングの意味では、むしろ失敗です。
「仕事をするのは資格ではなく自分」といった、確固たる意識を持った上で、スマートに資格情報を名刺に記載した、信頼に足る仕事ができそうな名刺を作成してください。