illustratorなどの画像作成ソフトを使い名刺のデザインを自分で作る場合、気を付けなければならない点というのはたくさんあります。
中でも名刺など印刷媒体のデザインをする場合に気を付けなければならない、特有のチェックポイント「塗り足し」という設定はご存じでしょうか。
自宅やオフィスのパソコンとプリンタで名刺を自作する場合は、一切気にすることのないこの塗り足しという概念ですが、印刷会社に入稿するための原稿を作る際は、必須の知識となります。
この記事では、塗り足しとは何なのかからはじめて、デザインデータを自作する場合の塗り足しの設定方法や、注意点について詳しく解説いたしました。
クオリティの高い名刺デザインを制作したい方は、最後まで読んで印刷データ作成の必須スキルについて理解してください。
名刺印刷上必要な「塗り足し」

それでは、実際に塗り足しについて詳しく見ていきましょう。
塗り足しとは?
印刷物のデザインをする際に設定しなければならない塗り足しとは、名刺のデザインでフチにかかる画像やベタ塗りを使う場合、裁ち落とされるラインよりはみ出して「塗り足して」おく部分のことです。
フチいっぱいまで紙色を出さずに印刷したい場合(フチなし印刷)、塗り足しを忘れると完成品の端に白い(紙色による)筋が見えてしまう場合があります。
塗り足しはなぜ必要?
印刷所で印刷物を製作する場合、通常は実際の仕上がりよりも大きな用紙に印刷がされ、指定のサイズにあわせて四辺を裁断して仕上げます。
しかし、効率的に考えても1枚1枚紙をカットするわけではなく、用紙を何枚も重ねて裁断されるために、その際に若干のズレが生じてしまう可能性があるのです。
塗り足しを行っていないデザインの場合には、少しでもズレが生じるだけで紙の端に印刷されていない部分が白く残ってしまう現象が起き、それがデザインを損なってしまいます。
それを避けるために、あらかじめ裁断予定のラインよりも外側まで「塗り足し」を設定しておく必要があるのです。
デザインデータを自作する場合には必ず塗り足しを確認
コピー機でチラシや雑誌をコピーしたことがある方は分かると思いますが、どれだけぴったりと読み取り台に置いたとしても、用紙のフチに白い余白が残ってしまいます。
これは、紙のサイズが決まったモノに印刷をしているため、フチギリギリまでの印刷が行えないために起こる現象です。
大きめのサイズの紙に印刷してから裁断する方法なら、こういった現象が起こる心配はありませんが、その分あらかじめはみ出すことを前提で塗り足しを設定しておかなければなりません。
近年人気の安価な名刺のネット印刷では、デザインを自作して入稿する必要があるため、フチギリギリまで色を塗るデザインとしたい場合は、必ず自前で塗り足しを設定したことを確認しておく必要があります。
デザインデータ自作の注意点

それでは、実際にデザインデータを自作する場合の、塗り足し設定の注意点を解説します。
デザインソフトはillustratorとPhotoshopがベスト
印刷会社によって対応するソフトはさまざまですが、どこのサービスでも対応しているソフトは、やはりAdobe社のillustratorです。
同社のPhotoshopで画像処理を行い、illustratorで入稿データを製作するというのが、もっとも現実的な方法で、これであれば印刷会社を選ばずに入稿することができるでしょう。
また、illustratorであればほとんどの印刷会社で、名刺データ作成用のテンプレートが用意されていますので、それをダウンロードして利用すれば、比較的かんたんに名刺デザインのベースを整えることができます。
>>【イラレで名刺を作る】ソフトを立ち上げる前に考えるべき5ステップ
トンボと塗り足しの設定
illustratorに関わらず、どのソフトでも共通していえることですが、印刷用のデータを作成する場合には、塗り足しとともに「トンボ」と呼ばれるガイドマークを設定する必要があります。
トンボとは、実際に断ち切る線はここですよということを示すためのガイドマークで、名刺の四隅に設置するもので、その延長線上を結んだラインが断ち切りラインを示すのです。
このトンボを印刷することにより、そこで示されたラインを裁断機で断ち切りますので、このトンボで示されたラインより外側にはみ出した部分が塗り足しということになります。
名刺の塗り足しは「3mm」
トンボで示されたラインから外側にはみ出させる塗り足しですが、どこの印刷会社も大体共通で「3mm」の塗り足し設定を求めているようです。
これだけあれば大量枚数の同時裁断の場合でも、ズレによる枠線の浮き出しも避けられますので、必ず3mm以上の塗り足しを設定するようにしてください。
名刺周辺の余白も同時に確認
塗り足しとは反対の考え方として、名刺のフチにかけたくない文字やイラストデータなどは、四辺からこちらも約3mm程の余白を空けてレイアウトするようにしてください。
名刺の端ギリギリに文字などをレイアウトすると、これも裁断時のズレによって必要なデータが断ち切られてしまう可能性があるからです。
名刺サイズの実寸
では、これらのことを踏まえたうえで、実際の寸法について確認をしておきましょう。
基準は一般的なビジネス名刺によく使われている、名刺4号(別名:東京4号、大阪9号)の91mm×55mmを基本とします。
- 名刺サイズ(断ち切りサイズ):91mm×55mm
- データ配置サイズ(余白3mmずつ):85mm×49mm
- 塗り足しサイズ(各3mmずつ):97mm×61mm

>>名刺を印刷する際のサイズ指定|名刺サイズやピクセル数について知ってますか?
プロがデザインしたテンプレートなら難しい設定はいらない

このように名刺のデザインを自前で用意する場合、塗り足しやトンボの設定などさまざまな規制を踏まえてデータを用意しなければなりません。
各業者ごとにデータ自作用のテンプレートも用意はされていますが、それを利用したとしてもイメージ通りの名刺を作るためには、やはりそれなりの経験とスキルは必要になります。
そのためにかける時間もばかにはできないでしょうし、それであればその時間を他の生産性の高い仕事に回し、デザイン自体は印刷会社が用意したデザインテンプレートを利用するのはいかがでしょう。
印刷会社が保有している数々のテンプレートは、当然ながらすべてプロのデザイナーが用意したもので、どれを取ってもクオリティの高いデザインであることは間違いありません。
そうしたテンプレートを利用すれば、時間を節約しながらお手軽にプロクオリティの名刺を手にすることができます。
まとめ
この記事では名刺データを自作する際、絶対に忘れてはならない「塗り足し」について解説いたしました。
ベタ塗りや写真・イラストなどの画像を、名刺の背景に使用したり、端から端まで渡らせたラインを引くときなどは、塗り足しを忘れると用紙の断ち切りの際白い線が出てしまい、どうにもしまらない出来栄えとなってしまいます。
そんなことでせっかくの名刺を台無しにしないためにも、塗り足しと余白には気を付けてデータ作成を行い、自身のブランドを存分にアピールできる名刺を製作してください。