格式ある高級料亭や寿司屋・天ぷら屋などの和食系飲食店。
はたまた老舗和菓子屋や老舗旅館といった和風の店舗型ビジネスの中でも、高級感を演出したいハイクラスな和風店舗の場合、名刺1つとってもやはりこだわりのモノを用意したいものです。
そんな時は和紙を使った名刺はいかがでしょう。
近年はカラー印刷が身近なものとなったことにより、デザインでの差別化というのも難しくなっていますが、紙質そのものを変化させてみるというのは、個性を埋没させないためにも有効な戦略です。
この記事では、高級和風店舗だけでなく書家や随筆業、日本画家などの和系アーティストにおおすすめの和紙名刺の種類と作成時の注意点について、詳しく解説いたします。
名刺用和紙の種類

名刺の紙質を変えるということは、他のどの方策よりもかんたんに初対面の相手に与える印象を変えることができます。
特に見た目だけでなく手ざわりでもアピールできる和紙であれば、その効果はなおさらです。
まずは名刺に利用できる和紙の種類をご紹介します。
>>こだわりの名刺を作りたければ紙の種類へのこだわりを持とう
大礼紙
明治天皇即位式の「大礼」にちなんで名づけられた「大礼紙」は、招待状やお礼状などによく用いられ、名刺用紙にも最適な上品な印象を持った高級紙です。
両面に花びらを散らしたような繊維模様が入っているため、その繊維模様が光の加減で光沢を放ち高級感を感じさせます。
雲竜紙
細かい繊維や手ちぎりされた長い繊維などが不規則にからまり、両面に雲のような繊維模様が見られるため名づけられた「雲竜紙」。
厚みとやわらかさを併せ持つ雲竜紙は名刺用紙にもよく使われ、重厚な高級感を演出してくれます。
みやび
連続した花柄模様が表面に入り、裏面は白無地で加工された名刺用にもすぐれた紙です。
高級感と優雅さを兼ね備えているため、フォーマルでかわいらしい雰囲気が魅力的で、特に女性スタッフが多い店舗などには向いています。
手すき和紙
「大礼紙」「雲竜紙」「みやび」といった和紙は、洋紙の技術と和紙の技術を組み合わせて作り出された、印刷用に特化した和紙です。
しかし、日本古来の手すき和紙も名刺に利用することができ、特に「1枚漉き」と呼ばれる名刺サイズの手すき和紙なら、用紙四辺の「耳」がふぞろいなためより個性的な高級感を演出してくれます。
原料や産地、職人の違いにより色味や手ざわりの違いが出るのも、手すき和紙の魅力です。
ただし、1枚漉きの和紙は機械印刷には適さず家庭用プリンターでは印刷ができませんし、印刷会社でも1枚1枚手作業で印刷する必要があるため、金額はどうしても高額な名刺となります。
エンボス加工紙
こうした実際の繊維模様をいかした和紙の代わりに、エンボスなど和紙「風」の凹凸加工が施された用紙も、高級感を演出した和風店舗型ビジネスの名刺にはおすすめです。
こうした加工紙であれば、本物の和紙にはないビビットカラーの用紙なども用意されていますので、より広範囲な演出を試すことができます。
>>【名刺用紙】上品でおしゃれな名刺にぴったりなエンボス加工された用紙21選
作成時の注意点

和紙を使って名刺を作る場合は、通常の用紙を使った場合とは違った独特の注意点があります。
より高級感のある名刺が作りたい場合は、こうした注意点に留意してデザインを考えるようにしてください。
印刷のノリを考える
大礼紙など用紙の技術を応用して作られた和紙であればそれほど問題はありませんが、手すき和紙をはじめとする表面に凹凸が激しく見られる用紙の場合は、どうしても印刷のノリが悪く「かすれ」や「にじみ」が生じてしまう場合もあります。
QRコードなど正確性を期す意匠を印刷したい場合は手すき和紙は避けるなどの配慮も必要ですが、このことを最初から計算に入れたうえで大胆なデザインを取り入れることも、和紙名刺を作る楽しさです。
画像とのバランス
和紙を使って高級感のある名刺を作成したい場合は、そこに掲載する情報自体はなるべくシンプルに厳選することが大切です。
デザイン上もテキストデータのみで構成するほうがより高級感を際立たせますので、一般の名刺とちがい画像の使用は慎重に行います。
一般の名刺のように背景に写真やイラストなどを利用するデザインは、インクのノリの面からも避けた方が無難ですし、ロゴデザインなどを使用したい場合にもワンポイントのアクセントに抑える方が良いでしょう。
フォント選び
店舗型ビジネスの場合は店名などがロゴデザイン(ロゴタイプ)として決まっていることがほとんどでしょう。
それを名刺に印刷する場合には、それ以外のテキストデータもできるだけロゴタイプの書体にイメージの近いものを利用することが、美しい名刺デザインのためにも大切です。
毛筆書体1つとってもさまざまな種類があり、それぞれに個性もありますので、見比べてもっとも近いものを選択してください。
>>【飲食店・小売店】和風店舗が作る和風デザインの名刺アイデア
和紙名刺におすすめのデザイン

それでは、和紙を用いた高級感のある名刺のデザインを作成する場合の、おすすめのアイデアについてご紹介します。
手書き筆文字
書道が得意なスタッフがいる場合や、多少の費用をかけてでもプロの書家や筆文字デザイナーなどに依頼するのもいとわない場合は、手書きの筆文字を名刺に入れるのはいかがでしょう。
毛筆書体でも力強い印象の書体などはありますが、手書きの迫力に勝るインパクトは望むべくもありません。
表面にスタッフ名のみを大胆に筆文字で配し、裏面に社名や住所・電話番号など必要なデータをまとめて印刷するなど、思い切った名刺デザインはきっと人の目を引き付けます。
>>おしゃれな力強い筆文字名刺で初対面を制する【男性フリーランスに大人気】
箔押し加工
金や銀、あるいはカラー加工された金属片を極薄の厚さに引き伸ばし、それを熱で対象物に圧着させた箔押し加工は、キラリと光るワンポイントの名刺デザインとして人気です。
手すき和紙には利用できませんが、その他の洋紙であれば店舗のロゴマークや店名のみをメタリックな光沢で表現するような、パッと人の目を引く高級感あふれる演出が施せます。
>>キラリと光る!箔押し加工でワンランク上の名刺はインパクト抜群!
色づかい
和紙を使った高級感のある名刺をデザインするためには、あまり多くの色を使わないということもポイントとなります。
近年一般的な名刺ではフルカラー印刷の導入も当たり前に行われていますが、あえて少ない色数のみで勝負するといった引き算の戦略も、高級感の演出には有効です。
- 手すき和紙に黒1色でシンプルに情報を掲載
- 筆文字の名前に落款のような朱色のワンポイント
- 店名の部分のみを金の箔押しで表現しあとはすべて黒1色で表現する
など、黒1色、もしくは黒+何か1色程度のシンプルな構成とすることが、和紙の質感をいかした名刺デザインにはふさわしいでしょう。
まとめ
この記事では、和紙を用いた高級感あふれる名刺の作り方について、実際のデザインポイントを交えてご紹介してまいりました。
用紙の技法を取り入れた和紙用紙と手すき和紙。
どちらの用紙を使う場合でも、手ざわりまで含めた和紙の風合いをいかすには、できる限りシンプルな情報に絞り込んで掲載するというのがポイントとなります。
QRコードやWEB名刺なども併用することにより、必要な情報はIT技術を使って伝えることもできる現代ですから、ホームページURLやSNSアカウントなど伝えたい情報が数多い店舗や個人の場合でも、工夫次第で人の目を引く和紙名刺は作れるはずです。
この記事で紹介したことに留意して、どうか最高の1枚を手に入れてください。