名刺製作を依頼する場合、近年はネット印刷サービスを利用する方も多いのではないでしょうか。
これらのネット印刷はどこも格安さがウリのサービスで、現在の名刺作成では当たり前に利用されるビジネストレンドといってもいいでしょう。
しかし、格安には格安である意味が当然あるはずで、そうしたことを理解しておかないと完成品が送られてきた時に「なんか持ってたのと違う!」となってしまうことも往々にしてあります。
この記事ではそんな「思ってたのと違う!」という失敗事例5つと共に、防止策を合わせてご紹介します。
ネット印刷ならではの特徴を理解して、こうした事態に陥らないためのリスクヘッジの一環としてください。
ケース1:紙がペラペラで安っぽすぎた

名刺の金額を左右する要素の中で、もっとも大きく作用するものは用紙の選択です。
用紙の厚みや種類が変わるだけで、その価格が数倍も変わるということは少なくありません。
逆を返せば各印刷会社がもっとも最安値として例示している名刺価格というものは、その中でも一番安い紙を使っているわけで、当然のごとくその紙は名刺用紙としては薄手で、安っぽい印象を与える紙であることは致し方ありません。
これを予防するためには、可能であれば各業者が用意している用紙サンプル(無料のことが多い)を取り寄せることをおすすめします。
>>こだわりの名刺を作りたければ紙の種類へのこだわりを持とう
ケース2:印刷が縁いっぱいだった

ネット印刷の最安値というサービスでは、印刷のみ請け負いデザインは完全原稿での入稿を求める所も少なくありません。
この場合できる限り安く済ませたいと考えれば、必然発注者が自分でデザインを行うことになるでしょう。
さまざまなパソコンソフトを利用して名刺デザインを行う場合、気にしなければならないポイントとして「余白」の設定というものがあります。
通常印刷物のデザイン指定を行う場合、「トンボ」と呼ばれる断ち切り用のガイドラインの挿入を求められると思いますが、この「トンボ」のラインから最低でも内側3mm以内にデザインを収めないと、このような現象が起こってしまうのです。
これは大量の紙を重ねて裁断する際に若干のズレが生じるために起こることで、印刷の工程上致し方ない現象ですので、デザイン作成の際には必ず留意する必要があります。
ちなみに背景などの塗り足し部分も、「トンボ」のラインから3mm以上は外側にはみ出して設定するように指示されることも、同様の理由からです。
>>名刺作成時の「塗り足し」ってなに?なぜ必要なの?【実践解説】
ケース3:色が想像と違う

想像したものと色合いが違うというのは、パソコン画面という光で構成された色合いと、印刷物というインクの色で構成された色合いの違いから起こります。
こうしたトラブルを防止するためには、次の2つのカラーモードの違いというものを理解し、入稿時に正式な指定を行うことです。
光の三原色(RGBモード)
パソコンのモニターなどに色を表現する場合は、光によって色合いが分かれて再現されます。
赤(Red:R)、緑(Green:G)、青(Blue:B)の3色が組み合わされ、色が混ざるほど明るくなり白に近づいていくという理屈です。
ちなみに黒は光が消えた(通電していない)状態のモニター色で表現されています。
通常のインターネットなどで見る色合いはすべてこれが元になっていますので、実物の名刺を写真画像として画面に移した場合でも、モニターの色調整の具合によってどうしても色の表現に差異が生じるのです。
色の三原色(CMYKモード)
これに対して印刷物などはインクを混色することにより表現される、色の三原色という方式が用いられます。
C:青(シアン:Cyan)、M:赤(マゼンタ:Magenta)、Y:黄(イエロー:Yellow)の3色が混ざり合えば、より暗くなり黒に近づいていきます。
実際にはこれに黒(K:キープレート)を加えた4色の混色で表現されるカラーモードですので、RGBモードとは実物の色味が大きく変わってしまいます。
これを解決するためにはデザイン作成での色指定時、通常はRGBモードで指定されている色合いをCMYKモードで指定することで印刷色に近い色合いが確認できますが、それでも画面上と実物との色合いが若干違うことは理解しておきましょう。
ケース4:予想しているより高い

これには実はさまざまな理由が考えられます。
ここではそんな考えられる理由のいくつかをご紹介します。
- 送料は別料金だった
- 〇枚ではA社が安かったが、△枚ではB社の方が安かった
- 紙質を変えたら他社より高くなった
- オプション加工の料金が高かった
- 急いで納品してもらったら想像以上に高かった
「〇枚△円~」という格安をうたったサービスは多々ありますが、単にそれだけの比較で他社より安いということだけで最安値を比較してはいけません。
制作枚数や納期、送料やオプション料金など価格が変動する要素はいくつもありますので、最終的に自分の要望が固まった段階で数社でのコスト比較をすることをおすすめします。
ケース5:かんたんに入稿ができない

多くのネット印刷では、格安で仕上げるために印刷の請負のみとしてデザインは自前で用意しなければならないということは先述しました。
こういったケースの場合、一からデザインデータを用意しなければならないため、先に挙げたトンボの挿入やカラーモード指定だけでなく、ファイル形式の確認やテキストのアウトライン化など、やらなければならないことはたくさんあります。
こうした作業はデザインに慣れている人ならばなんということはありませんが、普段やり慣れていない人にとっては大変わずらわしく、想像以上の時間と手間を取られてしまうものです。
これを解決するためには大きく分けて2つの方法がありますが、それぞれに一長一短はありますので、自身の状況に合わせて選択すると良いでしょう。
デザインを外注する
手間がわずらわしく時間もかけられない場合は、デザイン自体も外注に任せることがおすすめです。
しかし、そうすると当然費用が別途発生するため、格安サービスを使う優位性は損なわれます。
それでもできる限り安価で仕上げたい場合は、「ココナラ」などのクラウドソーシングサービスを利用するのもおすすめです。
テンプレートを用意した印刷サービスを使う
印刷だけを請け負う形態よりは若干の金額アップがあるのは否めませんが、あらかじめ用意されたデザインテンプレートを選んで発注する形式の業者を選ぶのもおすすめです。
完全オリジナルの名刺を手にすることはできませんが、カスタマイズの加減によってはかなりイメージに近い名刺を手にできるでしょう。
こうしたサービスでは大抵デザインの利用自体は無料ですので、印刷料金のみでほぼ手間いらずの名刺作成を行うことができます。
まとめ
名刺作成のニュートレンドとして当たり前に受け入れられるようになった、ネットでの格安印刷サービス。
各社ともにしのぎを削ったサービス展開をしていますが、そのどれを選べばよいかということはなかなか決めづらいのが現状です。
どのサービスにも一長一短はあり、それにより価格やクオリティも大きく変動します。
大事なのは価格とサービスのバランスを見極めることで、ここであげたような後々の後悔につながらないよう、ある程度の理論武装をしたうえで賢い業者選びを行ってください。