名刺印刷に使われる用紙はさまざまな種類が存在しますが、その中で上質紙という種類の紙を聞いたことはないでしょうか。
この上質紙という用紙は、印刷業界では非常によく使われている用紙で、比較的安価で印刷にも適した紙質として名刺印刷にもたびたび利用されますが、その特性は少々特殊です。
この記事では、上質紙の特徴をケント紙などこれまたよく聞く他の用紙との違いを含めて解説しつつ、その特性をいかした名刺づくりのアイデアをご紹介します。
企業名刺を作る際の用紙選びの参考に、どうぞ最後までお付き合いください。
名刺用紙に適した上質紙

上質紙とは名刺印刷にも適した用紙ではありますが、その製法ゆえにちょっと特殊な特性を持っています。
まずはその特性について詳しく解説しましょう。
>>こだわりの名刺を作りたければ紙の種類へのこだわりを持とう
名刺印刷に適した3大用紙
コート紙、マット紙、上質紙という3種類の用紙が、通常名刺用の紙を選ぶ上での代表的な3大用紙です。
- コート紙:用紙表面にコーティングのための塗布加工が施され、ツルツルした手ざわりとツヤのある光沢が特徴の高級紙です。きれいな色表現ができるため、厚手のものは写真印刷用紙、薄手のものはスーパーの折込チラシなどにもよく利用されます。
- マット紙:正確にはマットコート紙と呼ばれることもあるように、コート紙と同じく塗布加工が施された用紙ですが、ツヤ消しでしっとりとした手ざわりの高級紙に分類されます。写真印刷にも適しており、パンフレット等にも多用されます。
- 上質紙:上記2つの用紙と違って表面の塗布加工が施されていないため、コピー用紙やノート用紙といった文字を書き込み場合にすぐれた質感を持った用紙です。
上質紙の特性
それでは、上質紙の特性についてさらに詳しく解説します。
上質紙は先述の通り表面塗布が施されていない用紙のため、用紙表面に光沢やツヤなどはほとんどありません。
手ざわりもサラサラといった表現がふさわしく、パルプ含有量が多いため多少厚手となるのが特徴です。
コピー用紙やノート、または書籍などの紙に利用されることが多く、加工された用紙と比べれば鉛筆やボールペンでの筆記性にすぐれています。
ちなみにコート紙やマット紙は表面塗布が邪魔してしまい、文字などの書き込みはあまりうまく行えません。
そしてなにより上質紙がすぐれた点といえば、価格が安いということ。
この圧倒的なメリットのため、大量に消費したい用途の用紙として使われることが多いのです。
また、もともと紙色が付けられた色上質紙というものも作られています。
ケント紙との違い
製図用紙などにも使われ、上質紙と同様の紙質として知られるケント紙も、上質紙と同様表面塗布を行わず製品化された用紙で、広義では上質紙の仲間ということができます。
ただ、パルプの使われ方が違うためケント紙はツルツルとした硬く厚い紙になりやすく、その用途も図面やデザインといった、特殊用途に使われることが多いのがケント紙という用紙の特徴です。
上質紙の印刷特性
コート紙やマット紙で使われている表面塗布というのは、特殊な薬品を用紙の表面に塗布する加工のことですが、これはインクのノリを良くすることを目的に行われます。
つまり、その塗布が行われていない上質紙の場合、インクのノリ自体は悪くないものの少し沈んで落ち着いた色合いに印刷され、インクがにじみやすいためあまり高精細な画像印刷などには向いていません。
上質紙の用途と厚み
上質紙の用途として多いのは、コピー用紙やノートとは先述しましたが、それぞれの用途別の厚みは次のとおりです。
これを参考に名刺用紙として利用する場合の厚みの基準とすると良いでしょう。
- 薄手の書籍用紙、小冊子など:0.07mm、上質紙55kg
- 大学ノート、コピー用紙など:0.09mm、上質紙70kg、上質紙中厚口
- 薄手の名刺用紙など:0.11mm、上質紙90kg、上質紙厚口
- パンフレット、一般的な名刺用紙など:0.13mm、上質紙110kg、上質紙特厚口
- 薄手のはがき、厚手の名刺用紙など:0.17mm、上質紙135kg、上質紙最厚口
- 厚手のはがき、会員カードなど:0.25mm、上質紙180kg、上質紙超厚口
>>名刺に最適な厚みの用紙とは?名刺の厚みが印象を左右する!
上質紙の特性をいかした名刺づくり

上質紙の特徴に関して解説してきましたが、ここまで読まれた方は上質紙特有の印刷特性の弱さなどから、「上質紙は名刺用紙としては向いていないのではないか?」という疑問を持たれるかもしれません。
しかし、価格の安い上質紙は名刺を大量に用意したい職種などには非常に向いており、さらにその特性をいかした用途を心がければ、上質紙の名刺は非常にすぐれたビジネスツールとなる可能性を秘めています。
ここではそのためのアイデアをいくつか紹介します。
テキストデータを中心としたデザインレイアウト
高精細の画像印刷などには向かない上質紙ですが、複数のインクが隣り合い混ざり合うデザインが向いていないというだけで、通常のテキストやロゴマークなどのベタデザインを印刷するだけならなんの問題もありません。
特にビジュアル的に凝ったデザインは必要とせず、かつ大量枚数を用意したい名刺やカードの場合にはむしろおすすめの用紙です。
メッセージカード型名刺

営業職、特に顧客のところへ足を運んで営業回りを行い、名刺を配る必要のある訪問セールス系職種の場合は、大量の名刺が必要となるでしょう。
こういった職種の場合は、出向いた先が不在であった場合などに名刺にメッセージを書き込み、来訪したことを知らせるメッセージカードとして利用することも多いかと思います。
こうした文字を書き込むことが多い名刺には、上質紙はもっともすぐれた用紙です。
注意!名刺に書き込む際のビジネスマナー
営業職が顧客の不在時にメッセージを書く場合にはなんの問題もありませんが、通常のビジネスシーンでの名刺の書き込みにはちょっと注意が必要です。
基本的に名刺交換の場で、相手の目の前で名刺に書き込みをするという行為はビジネスマナー上はNGですので、自分の名刺、相手の名刺関わらず特殊なケースを除いては避けるようにしてください。
スタンプカード併用型名刺

店舗型ビジネスで名刺とショップカードの2つの役割を持たせた名刺を作りたい場合にも、上質紙の利用はおすすめです。
こういったケースでは特に、裏面にスタンプカードや会員証といった用途を併用させ、スタンプや書き込みを行うといった使い方が、上質紙ならばスタンプの裏移りなども気にせずノンストレスで行えます。
やわらかい印象のイラストを利用した名刺

画像表現が苦手な上質紙ですが、逆に淡くやさしい印象の印刷をする場合にはおすすめです。
水彩画や絵手紙調など「にじみ」をうまくいかしたいイラストの場合は、くっきりと表現されるコート紙やマット紙よりもやわらかい印象で印刷することができます。
まとめ
価格が安く、筆記性にすぐれた上質紙の特性とその用途についてご説明してきました。
上質紙はその特性ゆえ名刺用紙としての利用はコート紙やマット紙に一歩おとりますが、その特性を逆にいかせば非常に強力なビジネスツールとなる可能性を秘めています。
名刺を大量に用意したい方や、直接名刺に書き込を行いたい職種の方などは、ぜひ上質紙の名刺を検討してみてください。